トップメッセージ

私たち平安伸銅工業株式会社は、1952年大阪市の十三で銅を加工する町工場としてスタートしました。
当時、多くの人が戦災で家財を失い、誰もが安心して暮らせる住宅を大量に供給することが日本中で求められていました。創業者である私の祖父は銅の加工の仕事をしながら、他社に先駆けてアメリカからアルミサッシの製造技術と工作機械を輸入。大工さんが現場で手作りする木サッシに代わる商品として、日本中にアルミサッシを普及させました。
二代目の父の代になるとアルミサッシの事業は成熟期を迎え、新しい事業へと軸足を移すこととなりました。
1970年代に住宅供給が落ち着きを見せ始めると次に課題となったのは、都市部への人口密集と手狭な住環境の改善でした。祖父と父は、アメリカでシャワーカーテンを吊り下げる道具として使われていたテンションポールを、ネジやクギを使わず収納場所を増やすことが出来る収納用品「突っ張り棒」として用途提案。ホームセンター等のチェーンストアの発展とともに突っ張り棒を使った新しい暮らしを日本中に普及させました。
2010年、私は三代目として全く違う業界から家業に入りました。そして一つの「違和感」に直面しました。
誤解を恐れず端的にいうと、社内に目を向けると「使い手」を無視した商品が普通だったことです。
例えば、当社の主力商品の突っ張り棒についても、競合会社との競争の中でより機能性を上げるため「耐荷重」を重視していました。結果、使い手がどのように使うのかに関係なく、たくさんの種類の耐荷重の商品が増え、逆にどれを買えばいいのか、分かりにくくなっていました。
工場では生産効率を重視するあまり、製造を中心とした「何が作れるか」からの開発が主流で、「何に困っているか」からの開発はおざなりにされていました。
これでは絶対にダメだ。そう気づいた私は、今一度原点に立ち返り、手にとってくださる方がワクワクする商品を世に送り出すことが必要と感じ、改革に乗り出しました。
まず取り組んだのが、使い手の声を知るため、「整理収納アドバイザー」というお片付けの専門資格を取得し、有資格者のコミュニティに自ら入って行きました。そこで初めて「平安さん知ってるよ」「突っ張り棒こう使ってるよ」という方々と出会いました。
社内体制にも目を向けました。生活に関わる商品を作っている会社であるにもかかわらず、私が入社した当時、女性スタッフは私を含め4人でした。今では、16人にまで増えました。
さらに、2014年に資格取得で出会ったお片付けのプロと一緒にお片付け情報に特化したウェブメディア「cataso」【カタソ】を立ち上げ、商品提供だけでなく、役立つ暮らし方のノウハウを伝えるプロジェクトもスタートさせました。
社会が成熟し、暮らしに役立つ道具はいつでもとこでも手に入る時代になりました。しかし、周囲を見渡すと暮らしの不便さはまだ解消されていません。
振り返ると、平安伸銅工業という会社は、戦後から高度成長期のアルミサッシ、安定成長期以降の突っ張り棒と、時代に合わせて提供する商品を変えてきました。次は私の番になりました。これからは、成熟した社会だからこそ、単に役立つ道具の提供だけでなく、暮らし方のノウハウまで提供すること、つまりハードとソフトの融合が新しい問題解決の鍵となると考えています。
使い手とのコミュニケーション場としてのメディア、生活者目線のモノ作りが出来る社内体制、準備は整いました。後は実験と検証を繰り返しながら前に進むのみです。
まだまだ三代目の時代は始まったばかりですが、平安伸銅工業には綿々と受け継がれる理念があります。時代に合わせて手段を変えながらも、アイデアと技術で、世界中の人の豊かな暮らしの創造にこれからも貢献してまいります。
代表取締役 竹内 香予子