STORY

平安伸銅工業の三代目社長、竹内香予子です。2010年に家業である同社に戻りました。当時、「使いたい!」と思える商品は社内に一つもありませんでした。「なぜだろう?」。その疑問と向き合う中で、クリエイティブユニットTENTと出会い、私たちなりの答えを導き出すことができました。それが「DRAW A LINE」です。老舗故のしがらみや意外な可能性。それに気付かせてくれたTENTとの出会い。色々なことがあった開発のストーリーをここで少しご紹介します。

突っ張り棒の老舗メーカー 成長と衰退

平安伸銅工業は、1952年創業の「突っ張り棒」などアイデアグッズを主力とした日用品メーカーです。創業時から「アイデアと技術で暮らしを豊かに」を理念に掲げ開発を続けてきました。突っ張り棒は、1975年に私の祖父、笹井達二が、アメリカでカーテンポールとして使われていた物を日本に持ち込んだのが起源です。初めは1種類だけだった商品も15㎝~3mまで種類が増え、暮らしを支える裏方として成長しました。
80年代以降、突っ張り棒はホームセンターなどチェーンストアの成長に合わせて爆発的にヒット。発売当初は珍しかった商品もお店が増えるにつてれ、全国どこでも手に入る定番品へと変わっていきました。また、市場を創ったメーカーでも他社と差別化するのがとても難しくなっていきました。私が家業に戻ったのは、まさにその壁にぶち当たっている時でした。

自分が使いたい物がない現実

当時の私たちの開発は、マイナーチェンジばかり。これまでのヒット商品をいかに機能を落とさずコストを下げるか。それに明け暮れ、もう空雑巾のどこを絞ればいいのか?そんな状態でした。「昔の方が良かった」。営業担当者が口にした時の申し訳ない気持ちは今でも忘れられません。でも、その指摘は的を射ていたと思います。なぜなら私自身、この会社に自分が使いたい物がなかったのです。

クリエイティブユニットTENTとの出会い

昔の様にヒット商品を出したい。そのためにどうしたらいいか?模索が始まり、縁あってクリエイティブユニットTENTと出会いました。スタート時は何が突破口になるか全然分かっていませんでした。「TENTさんと一緒に新しいブランドと商品をゼロから作りたい」。漠然と、そう依頼しました。「まずはできるできないを考えずに、一番良いと思う案をどんどん出して欲しい」。私たちのそんな要望に応えて、TENTからは家具や電化製品など幅広い提案が出されました。

デザインの柔らかさ 老舗の頑なさ

私たちはファブレスメーカー(生産を外部へ委託しているメーカー)です。だから、欲しい物は何でも作れると当初は思っていました。今も思っています。ですが、提案を頂いた当時は、既存商品とあまりにも違う考え方に驚き、新しい素材や技術の活用に不安を覚え、正直何度も「うちではできないかも」と思う瞬間がありました。その度に、平安伸銅工業とTENT、双方にできることは何か。丁寧に歩み寄りを続け打開策を出し続けることで、方向性が徐々に定まっていきました。そして出来上がったのが、自分たちの過去最大のヒット商品である、突っ張り棒そのものを再定義する「一本の線からはじまる、新しい暮らし」という、DRAW A LINE のコンセプトでした。

一本の線からはじまる、新しい暮らし

真っ白な紙に、1本の線を描くように。空間の中に1本の線を描き、そこに、照明とテーブルをつけて寝室に置いたり、フックをつけて帽子やハンガーを掛けて玄関に置いたり。使う人ごとにカスタマイズして空間を彩ることができます。そのコンセプトの分かりやすさからか、発表直後から、社内外から「こんなパーツが作りたい、あんなパーツを作って欲しい」など、これまでは聞くことができなかった様々な声があがりました。
DRAW A LINEは、私たちにとってもまさに、描き始めたばかりの、スタートラインです。ユーザーのみなさんと一緒に、様々な新しい暮らしを作り出していければ嬉しいです。

平安伸銅工業(株)は、1952年に創業した「突っ張り棒」のトップシェアメーカー。価格と機能を重視したアイデアグッズの開発を主力事業としている。DIYパーツブランド「ラブリコ」の開発など、突っ張り棒の技術を活かしながら時代に合わせた新しい暮らし提案も行っている。

HEIAN SHINDO

治田将之と青木亮作からなるクリエイティブユニット。 見て楽しく、触って嬉しく、使う程に愛着が湧くものづくりをテーマに、 テーブルウェア、家電、インテリア用品などのプロダクトデザインを行い、 商品企画、パッケージ、Web、アプリUI、展示空間プロデュースなど、 コンセプトからのトータルデザインを得意としている。

www.tent1000.com