暮らすがえジャーナル

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“私らしい暮らしの街”を作りたい。

平安伸銅工業がお送りする、連載コラム。
私たちのビジョン「アイデアと技術で『私らしい暮らし』を世界へ」にある「私らしい暮らし」について、深堀していきます。

「私らしい」とは「個性的であれ」ということなのか?

ビジョンに掲げた「私らしい暮らし」とは何か。

その答えを見つけるために、前回のコラムでは、輪郭を描いて解像度を上げていくという話をした。
輪郭を描いていくための最初の一歩は、“叩き台”を出すこと。

平安伸銅工業では、「正解じゃなくてもいいから一度カタチにしてみる」ことを大事にしている。
正解じゃなくても、一度形にしてみることで「あ、これじゃないな。」と気づくことが、次のステップに繋がる。
このコラムも、言葉で「私らしい暮らし」の“叩き台”をつくる行為そのものだったりする。

では、“叩き台”を書いていきたいと思う。


そもそも「私らしい」とは何か。
「私らしい」に近い言葉に「個性的」がある。

個性的な暮らし。
例えば、パンクロックが好きで、壁中に好きなバンドのポスターが貼られていて、派手なエレキギターが飾られ、目が覚めるような配色の部屋は、個性的でその人らしいと思うだろう。

じゃあ、私たちは「個性的な空間を作ること」を目的にしたいのかというと、なんだかしっくりこない。
実際、私たちがこれま提供してきた製品それ自体は、“個性”を主張するものではない。
誰かにとって何の変哲もない、「ふつう」の空間でもいいのではないかという気がしてくる。


では「ふつう」の空間とは何か?

整理収納用品をたくさん作ってきたから、整然とした空間のこと?
でもきっと、すこし乱雑な状態を「ふつう」と捉える人も、心地がいいと考える人もいる。

きっと、整理整頓自体は「ふつう」の暮らしの手段のひとつなのだろう。

こうした対話を社内でも重ねるなかで、浮かんできたのが「ありのまま」という言葉だ。

世界は急激に変わり、私はままならない。

現代社会は、常に変化と隣り合わせ。
物価の上昇、AI技術の進展、企業方針の急な転換、予期せぬ家庭の事情。
こうした世界の急激な変化に、日々巻き込まれる。

いつも買っていた缶コーヒーがいつの間にか値上がりしている。
でも給料は上がらない。
これから、自分はどうなりたいんだろう。
子どもたちをどう育てていけばいいんだろう。

自分ではどうにもできないことに流され、時には漠然と不安になったり、感情が乱れたり、他人と衝突してしまったりする。



それでも、毎日をなんとか生きていること自体が凄くないか?
この場を借りて自分自身にも読んでくださる方にも改めて言いたい。



ただ、暮らしているだけでも、私たちは十分にすごい。


その人が“ありのまま”になれる居場所を。

そんな、激流みたいな社会の中でも、心と身体をふっと緩ませ、心身ともに安らげる「ありのまま」の居場所があればいいなと思う。


たとえば――

朝、子どもを起こさないように静かにコーヒーを飲むリビング

平日の夜、お酒を飲みながら愛犬の頭を撫でているソファの上

誰かに個性を主張するものでもなく、自分が自分でいられる場所

整理整頓された空間じゃなくても、飾らない不完全な私でも大丈夫と思える場所。



スマートフォンの充電器のように、その人が心身共に充電できるような居場所があれば。
激流の中でも、自分のことを大事にでき、周囲の人を大切にできる余裕も生まれるのではないだろうか。

暮らしの中に“ありのまま“でいられる空間”をつくる

私たちは、そんな「ありのまま」でいられる居場所をつくりたい。

私たちがこれまで作ってきた商品は、個性際立つインテリアではない。
でも、その人自身の手で自由に空間をつくることができる。
主役ではなく、黒子のようにありたい暮らしを支え寄り添うことができる。


たとえば――

子どもが起きないように空間を突っ張り棒とカーテンで仕切ったり

ソファの横に、愛犬が倒してしまわないようにお酒や本を置く空間を作ったり



これこそが、届けたい「私らしい暮らし」そのものなのではないだろうか。
ありのままの自分を大切にして、心身ともに充電できるような暮らし。


それが叶えば、自分にやさしくなり、まわりの人にもやさしくなれる。


そんな循環を、この社会の中で、空間づくりを通じて広げていきたい。

100の居場所を集めた、呪文でたどり着く“私らしい暮らし街”

ビジョンは、どうすればいいのか迷った時に立ち戻るための「ルーラの呪文」だと前回書いた。
「私らしい暮らし」とは「その人が”ありのまま”でいられる居場所をつくること。」


今、平安伸銅工業ではそんな誰かの居場所を紹介していくサイトをつくりたいと考えています。
たくさんの居場所が紹介された、「私らしい暮らし」の輪郭を描く集合体。
まるで、ルーラの呪文で戻ってくる街のよう。


私たちが叶えたい「”ありのまま”でいられる居場所」を並べた街。
名前を付けるなら「私らしい暮らし街」(安直すぎるかな?)。
需要があるなら、本を出版してもおもしろい。

ビジョンは会社の指針となるものだけれど、暮らしに迷う誰かにとっても立ち返る場所になれればとも思っています。
SNS映えするようなオシャレな暮らしでもない、そっくりそのまま真似しなくてもいい。
ありのままの居場所が欲しいと思った時、自分をみつめるヒントになるような場所。


まずは、そんな街づくりから。