暮らすがえジャーナル

平安伸銅工業がお送りする、連載コラム。
私たちのビジョン「アイデアと技術で『私らしい暮らし』を世界へ」にある「私らしい暮らし」について、深堀していきます。
BBQに混ざって気づいた「いい街」の条件
不動産屋の川端さんに住民の送別会を兼ねたBBQに招待いただいた。
今度は電動キックボードのバッテリーを満タンにして、琥珀街へ向かう。
着いてみると、すでに20人ほどが集まっていて、新しく入居予定の人たちも混ざっていた。
その人は、器のお店と、よもぎ蒸しをはじめるらしい。とてもいいなと思った。
送別会に参加していた人たちは皆、入居者でもなんでもない“よそ者”の立場の僕に壁を作ることなく、自然に迎え入れてくれる。
今、僕が住んでいるマンションでは、お隣さんの顔も知らないし、町内会にも入っていない。
「ご近所付き合い」と呼ばれるものがひとつもない。
でも、だからといって僕は「つながりが多いほどいい」とも思っていない。きっとそれはそれで疲れてしまうから。
きっと大事なのは、必要なときに、ちゃんとつながれるほどよい関係性なんだと思う。
琥珀街には、それがあるように思った。
のりこさんとの出会い
その日、もう一つの出来事は、のりこさんとの出会いだった。
僕が借りようとしていた物件の隣に住んでいる方で、娘さんと二人暮らし。
上品で、柔らかな空気をまとっていた。
元々アパレルの接客業をされていて、今は友達のポップアップショップを手伝ったり、金継ぎのワークショップやケータリングの仕事をしているという。
話が盛り上がり部屋を見せてもらうことになった。
入口が2つあり、風がよく通る部屋にアンティークの家具が並ぶ。
「カーテンが風でふわっと揺れる姿が美しい」と語るのりこさんを見て、初めて琥珀街に来た朝も、開いたドアのすき間からカーテンが靡いていたことを思い出した。
アイデアは複数の問題を一気に解決する
のりこさんには、いつかこの場所で飲食店を開きたいのだそう。
でも、まだ資金が貯まっておらず、準備中とのことだった。
その話を聞いて、思った。
『ここで僕が本屋をやれば、僕のやりたいことも、のりこさんの夢も叶うのではないか?』
僕がこの場所を一部を借りて本屋をつくり、家賃を支払う。
それがのりこさんの初期投資の足しになればいいし、本屋があることで、お客さんが自然と集まる場所になるかもしれない。
僕にとっても、「無人の本屋だとこの場所では難しい」と言われていた当初の企画案が、のりこさんが住んでいることで解決できそう。
まるっと一軒借りるよりもコストが抑えられる。
こうした柔軟な契約ができるのも、川端さんという管理会社の存在があるからこそだ。
糸井重里さんが言っていた。
「アイデアとは、複数の問題を一気に解決するものだ」
バッテリー切れで立ち往生したあの日から、いくつもの偶然が重なって、気がづけばピースがピタッとはまった感覚があった。
というわけで、もう一度、本屋の計画を練りなおしはじめた。
さらに解像度が上げるために、まずは自分が心地いいと思う本屋に行き、そこの店主に話を聞いてみることにした。