暮らすがえジャーナル
こんにちは。
暮らすがえジャーナルです。
今回は、とある団地の一室を訪ねました。
そこにあったのは、団地の押し入れをラブリコなどでDIYして作られたオープンクローゼット。
一体どんな目的で作られているのか、株式会社カザールホーム代表取締役の中島さんにお話を伺いました。
中島 久仁(なかじま ひさひと)さん
株式会社カザールホーム 代表取締役。大阪を拠点にリフォーム・不動産事業を手がける一方で、DIYや賃貸リノベーションの分野に積極的に取り組む。2017年頃からDIYを暮らしに取り入れる試みを本格化し、「誰もが自分の手で住まいを楽しめる文化を育てたい」と活動を続けている。
――ここ、本当に押し入れだったんですか??オシャレでびっくりしました。
ありがとうございます。もともとは弊社のインテリアコーディネーターのお母さんのおうちだったのですが、こうして色々実験しながら押し入れの新しい提案を作っています。
DIY前の様子。以前は一般的な和室と押し入れだった。
暮らしの可能性をひろげていく
――今回こうした取り組みを始めようと思われたきっかけについてお聞かせください。
もともと、夏水組という内装デザイン会社を手掛けられているインテリアデザイナーの坂田さんと5年ほど前にご縁をいただいたことが始まりです。
そのつながりの中で、一緒にインテリアやリフォームの仕事をさせていただくようになり、そこで「DIYを暮らしに取り入れたら面白い」と考えるようになりました。
私は長くリフォームや不動産の仕事を続けてきましたが、工事や修繕だけではなく、もっと暮らしそのものを楽しめる提案ができるはずだと思うようになったんです。
――現在、具体的にどのようなことに取り組んでいらっしゃるのですか?
今回のような押し入れDIYなどを「レシピ付きDIYパッケージ」としていろんなマンションや団地に展開しようと思っています。
クローゼットや壁の一部など、限られたスペースからセットとして提案する。
そうすれば、入居者さんは自分の部屋を“自分らしく”簡単に変えられるようになります。
自分の好きな暮らしをつくるといっても、大掛かりなDIYをいきなりやるのはハードルが高い。
でも小さなDIYなら「できるかも」と思える。その一歩から暮らしの可能性は広がっていくはずです。
押し入れリノベーション提案のひとつ、シンプルな壁紙とラブリコで作られたオープンクローゼット。
――暮らしの可能性とは、具体的にどのようなことなのでしょうか?
例えば、みなさん家をリフォームするとき「カラフルでオシャレな壁紙も素敵だけど…。」とおっしゃりながら、結局無難な壁紙を選択されることが多いんですよね。
賃貸物件もですが、どうしても“白一色”で仕上げられることが多いです。
同じ仕事をしていた父からも「日本は衣食住の中で、住だけが遅れている」と言われて育ちました。
服や食は自由に楽しめるのに、住まいは保守的で変化を避けがち。
――確かに、壁紙って一度決めたら簡単には変えられないと思うから無難な色を選んでしまします。
でも本来はもっと自由で、さまざまな色や素材を取り入れる暮らしがあっていいと思うんです。
そもそも、日本の昔の家屋では、さまざまな絵柄の襖を楽しむ文化がありましたし。
DIYはそのきっかけになります。
今回、アクセントに入れている壁紙はパネルに壁紙を貼ったものなので、簡単に取り外しができるんです。
LABRICO(ラブリコ)やDRAW A LINE(ドローアライン)も簡単に取り外しができますよね。
こんな風に、「暮らしって自由に変えられるんだよ」ということを提案できればなと思っています。
ちいさな成功体験を
――本来、日本にも暮らしの中でデザインを楽しむ文化はあったんですね。簡単に変えられるのであれば、ちょっと冒険したインテリアもできそうです。でも、やっぱり「難しそう」と感じてしまうかも…。
確かにそうです。
でも実際にやってみると、案外簡単にできるものもあるんですよね。
さきほどのように壁を部分的に変えるだけでも、空間は驚くほど変わります。
大切なのは「小さな成功体験」を積むことだと思っています。
――「小さな成功体験」ですか。
たとえばこの押し入れも、ぱっと見ただけだと「すごいけど、自分にはできない…。」と思う方が多いと思うんです。
でも、90cmだけ壁紙を貼る、ラブリコを一本立ててみる。それだけで「案外簡単にできた、暮らしは自分で変えられるんだ」と感じてもらえると思います。
その一歩が、次へとつながっていくんです。
ベッドと収納の提案。奥の壁紙がアクセントに。パネルタイプなので自由に移動や張替ができる。
暮らしを「自分のもの」にする文化へ
――とても興味深いお話です。最後に中島さんの目指す未来を教えてください。
私が目指しているのは「暮らしを『自分のもの』にする文化」です。
服や家具を選ぶように、部屋の壁や棚も自分の感覚で変えていける。
そんな暮らしが当たり前になれば、住まいはもっと楽しく、もっと豊かになります。
これは一時的なDIYブームではなく、文化として根づかせたいものです。
小さな一歩をどう後押しできるかが、その仕組みを作っていきたいです。
ファミリークローゼットの提案。壁紙とアクセントカラーの有効ボードやカーテンで華やかな雰囲気に。
編集後記
暮らしってもっと自由に自分らしく変えていい。
押し入れを押し入れのまま使わなくてもいいし、気分で壁紙や内装を変えてもいい。
「暮らすがえ」もそんな思いから生まれた言葉ですが、そうはいってもその第一歩はハードルが高いのが現実です。
自分にできるの?失敗したらどうしよう、そもそも、どうやったらいいのかもわからない。
でも、誰かの後押しで小さな一歩を踏み出せば、世界はぐっと広がっていく。
中島さんの挑戦は、とてもわくわくするものでした。
さあ、暮らすがえ。