暮らすがえジャーナル

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今この瞬間の体験を大事にしたい。日本中を旅するアドレスホッパーの暮らし。

こんにちは、暮らすがえジャーナルです。
今回は、秋葉原でインバウンド向けツアーガイドをされながら、アドレスホッパーとして全国を移動されながら暮らす市原さんにお話を伺いました。
つっぱり棒、収納…もしかしたら、暮らすがえからは一番遠い存在?
そんな市原さんの「私らしい暮らし」とは。

市原 佑樹 さん

アドレスホッパー。日本全国を旅しながら「アニメ先生ユウキ」として、オンライン英会話講師や秋葉原ツアーガイド、ポッドキャスト配信などを行っている。

家を持たない、アドレスホッパーという選択

――今日は鶴巻温泉駅の近くの「ADDress※」の拠点にお邪魔しています。

秋葉原でツアーガイドの仕事がある時はここをよく利用しています。都心へのアクセスが良くて、のんびりとした空気が好きなので。
※Address…多拠点居住者向けの住まいサブスクサービス

――たしかに、おばあちゃんの家に来たような安心感があります(笑)アドレスホッパーになられる前から秋葉原でツアーガイドをされていたんですよね?

最初は大学を卒業して広告代理店に就職しました。
WEB広告の制作などが主な仕事だったんですが、直接お客さんの顔が見える仕事ではなかったので「この仕事って一体誰のためになってるんだろう?」って考えるようになって。

それに、会社というひとつのコミュニティの中で、ずっと同じ人たちと働いて同じ人たちと飲みにいく生活が僕にはどうしても合わなかったんですね。
そんな時、学生時代に留学していたカナダで知り合った仲間たちが来日したので、せっかくだからと秋葉原を案内したらそれがすごく好評で。
同じころに民泊も始めたりして、いろいろな人たちと交流するのって楽しいなって思ったんです。

自分がやりたいこと、楽しいって思うことをやろう。

そう思って2年ほど勤めた広告代理店を辞めて、ツアーガイドを始めました。

――そこからアドレスホッパーになられたのは、どういった経緯があったんですか?

5年ほど秋葉原でツアーガイドをしていたんですが、コロナ禍で仕事が無くなってしまったんです。
代わりに今度はオンラインツアーを始めてみたら、旅行に行けない海外のお客さんがたくさん申し込んでくれました。
日本のアニメって本当に海外の方に人気なんですよね。
僕ももともとアニメ好きのオタクだったので、オンラインでそういう話をしたらすごく喜んでもらえて。

一方で、自分の知っている土地以外の話は聞かれてもちゃんと答えられないな、とも思っていたんです。
アドレスホッパーになったのはその頃ですね。
その時は秋葉原の近くに住んでいたのですが、すごく狭い部屋に毎日いる生活もしんどいな、と思っていて。
移動して毎日新しいところで生活する。
同じ場所や環境の中でじっとしているよりも、いつも違うところに行ったり動いている方が好きな僕に向いている生活だなと思いました。
オンラインで海外の方と話す仕事なら、PCがあればどこでもできますし、日本中の土地を自分の目で見てまわることもできる。
自分の体験として語ることができるようになるのではと思いました。

――実際にアドレスホッパーになられていかがでしたか?

最初は持ち物が多くて移動も大変でしたが、慣れてくると、だんだん荷物も減ってきましたね。

身の回りにおくものは、必要なものだけに限定するようになりました。
僕、モノが貯まったり部屋が散らかっていくのが嫌なタイプなのですが、住む場所を移動すると強制的にリセットできるので、それも自分に向いてるなと。

なにより、知らないものと出会えるのは刺激になりますね。
その土地の食べ物もその場所で出会う人も。初めての場所への移動も楽しいんですよ。
今は、アドレスというサービスで全国にある民泊などの拠点を転々としているのですが、知らないところに行くのってワクワクするし、全国各地でいろんな人とコミュニケーションが取れるのも魅力ですね。

もちろん、一人になりたい気分の時もありますが、同じように旅をしている人はその辺りの間合いも分かっているので、お互いを尊重して一人になりたいときは一人で、交流したいときはみんなで集まる、ということができているかなと思います。

モノや形ではなく、今この瞬間の体験を大切にする暮らし

――暮らしの中でも、新しいものや人に出会うことが市原さんにとって大切なのですね

僕自身、アニメ好きのオタクなので、昔はいろいろなグッズを持っていて、荷物も実はたくさんあったんです。
でも、物への執着は減っていったように思います、アニメのグッズは秋葉原に行けばいつでも見れますしね。

代わりに、ライブにはよく行くようになりました。
これもその場でしかできない体験ですよね。形のあるものはいつか捨ててしまうかもしれない、でも体験や経験ってずっと自分の中に残るんです。

ただ、ツアーガイドのお客さんと記念にチェキを撮るんですけど、これは何枚増えても持ち歩いています。やはり思い出は大事にしたいなと。

もちろん、自分の家を持って安定した仕事に就くのも大事だと思います。
でも、今の僕にはそれよりも、自由でいることの方が大事なんです。

広告代理店で勤めていた頃より稼ぎは減りましたが、飲み会やストレス発散にお金を使うことがなくなったので、手元に残るお金もさほど変わっていません。
大事なものを優先して、自分が普通に生活ができるなら、すごくお金を稼ぐ必要もないのかなと思っています。

僕、「推しは推せるうちに推せ」って言葉がすごく好きで。

「推し」って自分の好きな人やモノを指すんですけど、今は好きだと思ってもその熱量は変化していくし、例えばバンドとか歌手とかが推しだとしたら、その人たちだって変わっていくんですよね。
いつか見たいと思っていたら、二度と見られなくなるかもしれない。だからこそ「推せるうちに推せ」なんですよね。

暮らしも人生も「今」を大切にしたい。
だから今は、好きなことをやって自由でいられるアドレスホッパーという生活を、続けていきたいと思います。

編集後記

ひとつの家ではなく、全国の拠点を転々するアドレスホッパー。
荷物は最低限、そこにはつっぱり棒も収納用品ももちろん登場しません。
でも、旅やツアーのお話をされる市原さんはとてもいきいきとしていて、すごく豊かに過ごされているんだなとインタビューを通じて感じました。

豊かで私らしい暮らし、とはいったい何なのか。
それは、その人自身が大切にしたいことを自ら選択し、当たり前の枠にとらわれず実現できている状態ではないか、と思うのです。
その答えは、十人十色。
市原さんの場合は軽やかに、全国の景色を見たい暮らし
家族との時間を大切にしたい人も、好きな物に囲まれたいもいるだろう
その手段の一つに、暮らすがえがある。

私は今、人生において、何を大切に暮らしていきたいのか。
そんなことを考えるところから、私らしい暮らしが始まるのかもしれません。

さあ、暮らすがえ。