暮らすがえジャーナル

今回は5月に行われた、「働く」について考えるトークセッションイベント、「はたらくの再発見 ぶっちゃけリアルトーク!」のレポートをお届けします。
本イベントは木村石鹸工業株式会社、株式会社友安製作所と平安伸銅工業の3社合同で開催。就活が形式的になっていることに疑問を持ったメンバーの声から企画が始まり、実際に働く社員が登壇して悩みも葛藤もぶっちゃけるトークイベントになりました。
異なる3社が一緒にイベントをつくったからこそ見えてきた、「愛される企業」の共通点。
若手社員たちの等身大の声から、これからの企業のあり方を探っていきます。

登壇者紹介
写真右から
平安伸銅工業株式会社
横山 小春さん
入社4年目。広報担当。ユーザーとの関係構築を担うカスタマーサクセスグループという部署で、広報活動やSNS運営、イベント運営を担当している。
木村石鹸工業株式会社
田邊 心和さん
入社2年目。営業部に所属し、OEMを中心とした営業業務に従事。顧客の要望に応じた製品提案から納品まで、一貫したサポートを行う役割を担っている。
株式会社友安製作所
松江 孝哉さん
入社3年目。「まちの変化の起点になる」をスローガンにまちづくり事業に従事。コミュニティデザインや企業ブランディング、クリエイティブに携わり、新たな価値創出をめざしている。
「見定める」ではなく「見てもらえた」という実感が信頼に繋がった
――みなさんがそれぞれの会社に興味を持ったきっかけは?
横山さん: 就活がうまくいってなくて、「どうしよう…」と悩んでいたときに、たまたま見つけたのが平安伸銅の説明会でした。“突っ張り棒”を作ってる会社って、ちょっとユニークで面白そうだなと思って参加したんです。実際にオンラインで説明会に参加したら、社員の方の雰囲気があたたかくて。老舗企業だけど、新しいことにも挑戦してる空気があって興味を持ち、選考に進みました。
田邊さん: 私は大学の授業で木村石鹸を知って、そこからずっと気になる存在でした。実は就活の1年前から説明会に参加してたくらいで、ずっと第一志望でした。

――入社の決め手は?
横山さん: 最終面接が、とにかく印象的だったんです。社長との面談が2時間もあって、準備していた答えは最初の30分で全部話しきってしまいました。そこからは、小学校時代の話まで深掘りされ、当時の体感としてはまったくうまくできなかったなという印象でした。もうダメだと思い、面接が終わったあと、ボロ泣きして友達に電話したくらい(笑)でも、その結果、入社が決まり、“素の自分”を見てもらえた上で入社に繋がったので、まるごと受け止めてもらえた感覚でしたね。この会社なら、自分らしく働けるかもしれないって思えました。
――2時間はなかなか長いですね(笑)
横山さん: はい、でもその分、私のことをしっかりみてもらえた感覚がありました。ほかの会社では、「どれだけ優秀か」を見られている感じが強かったんですが、平安は「どんな人か」をちゃんと知ろうとしてくれた。それが決め手になりましたね。

田邊さん: 私も似ていて。就活していると、多くの企業が自社の強みばかりをアピールする中、木村石鹸は「うちは研修制度とか、整ってない部分もあります」って、弱みもちゃんと話してくれて。それが逆に信用できるなと思いました。
――なるほど、良い部分だけ見せられると、逆に疑ってしまうんですね。
田邊さん:はい、裏表がないように思えて安心したのを覚えています。また、他の会社では「見定められてる感」が強かったんですが、木村石鹸は、人として見てくれてる感じがありました。例えば、私の話を聞いて、社内のメンバーと合いそうと想像してくれたり。
就職活動では評価する側・される側という考え方が一般的に思われますが、実は「ちゃんと見てもらえた」という実感こそが、企業との信頼を築く第一歩なのかもしれません。取り繕わずにいられる空気感、弱さも共有してくれる誠実さ。そんな企業に出会えたことが、登壇者の“ここで働きたい”という気持ちを動かした原動力でした。
「今できない=ダメ」ではなく、葛藤も見守る
――社会人になってから、思い描いていた理想とギャップはありましたか?
横山さん: ありましたね。4年目ですが、やりたいことを模索している自分に、ある意味ギャップを感じています。でも、平安伸銅はそういうふうに迷っていても、責められないというか。「今はそういう時期なんだね」って、受け止めてもらえる。逆に周囲が私の特徴を捉えて、「こんな役割あるけどやってみたら?」って声をかけてもらえるんです。迷っていることも見守ってもらえる空気感はすごくありがたいなと思います。
――「こうあるべき」という正解を求められないことは、安心感につながりますよね。
松江さん: 僕は入社してから、自分のできなさにギャップを感じました。学生の頃はイベント企画など様々なことにチャレンジしていたので、社会人になってもやっていけるだろうと自信があったんです。でも実際には全然思うようにいかなくて。特に僕が取り組んでいるまちづくり事業は年単位でのプロジェクトなので、すぐに目にみえる結果が出るわけではないんです。

――なるほど、すぐに結果が出ないのは不安になりますね。
松江さん:そうなんです。でも、うちの会社は「今できない=ダメ」とは見ない。ちゃんとプロセスごと認めてくれるので、そこは本当に救われました。できないことも、成長している段階だと前向きに捉えられるようになりました。
「こうなってほしい」という期待を押しつけるのではなく、「今、どんな状態なのか。今後どうしていきたいのか」を見守ること。それが、社員の意志やペースを尊重できる企業に共通する特徴なのかもしれません。そこにこそ、若手が安心して挑戦できる余白があるのだと、登壇者のお話から伝わってきました。
一緒に喜べることが何よりのやりがい
――皆さんが「この仕事、やっててよかった」と思える瞬間は、どんなときですか?
横山さん: 私は今広報を担当しているんですが、テレビでうちの商品が紹介されたとき、放送後に問い合わせが増えて、営業チームの人たちがすごく喜んでくれたんですよ。その時、「ああ、私の仕事って誰かの役に立ってるんだな」って改めて実感できたんです。
田邊さん: 私が担当しているOEMの営業は、製品化まで時間がかかるし、途中でいろんなトラブルもあるんです。でもそれをお客さんと一緒に乗り越えて、商品が完成したとき、「本当にありがとう」って言ってもらえたときの達成感が何よりのやりがいですね。
松江さん: 僕が取り組んでるまちづくりって、成果がすぐには見えないんです。でも、プロジェクト開始から1年後に地域の人から「おかげ様で、街がちょっと明るくなった気がする」って言われて。それが報われたなって感じた瞬間でした。
――やりがいって、自己成長とか成果だけじゃなくて、誰かと一緒に喜べる瞬間にこそあるのかもしれませんね。
田邊さん: そう思います。ひとりじゃなくて、「誰かと一緒に嬉しい」を感じられる場所があること。それが、この会社で働き続けたいと思える理由かもしれないです。
「やりがいは?」という問いに対して、かつては「成長できる環境」「成果を出すこと」といった答えが主流だったかもしれません。でも今、働く中でやりがいを感じる瞬間を尋ねると、多くの若手社員から返ってくるのは「誰かが喜んでくれたことが、自分の喜びだった」という声。それは、数字や肩書きでは測れない、良い関係性から生まれてくるもの。個人の達成ではなく、つながりの中で報われる感覚。それが今、多くの若手社員が求めている“働く意味”なのかもしれません。

おわりに
登壇した社員たちの言葉に共通していたのは、制度や評価体系ではなく、1人の人として見てもらえているという感覚、迷っている段階も許される安心感、そして、仲間と一緒に喜べる会社の空気感でした。
採用や育成に悩む企業こそ、こうした“関係性ベース”の視点から組織を考えてみると、解決の糸口が見えてくるかもしれません。
今回3社で実施したからこそ、違いや共通点が見えてきました。今回の気づきは一社だけではたどり着けなかったものです。企業の枠を超えて学び合うことの価値を改めて実感しました。平安伸銅工業はこれからも社会に対してオープンな会社であり続け、より良い未来をみんなでつくっていけたらと思っています。
採用・育成・制度設計―中小企業が直面する人事課題は多岐にわたりますが、人手不足が加速する中、それらを一社で抱え込むのは困難です。企業同士で支え合い、学び合う場をつくれないか。
そんな思いから、継続的に企業同士が支え合える場として「みんなで人事」というオンラインコミュニティを立ち上げました。

日々の実践から得られたリアルな知見を持ち寄り、共に考え、共に育つ関係性を築いていきます。地理や業種を越えてつながる“共創の場”として、より良い組織づくりに関心のある皆さんに参加していただけたら嬉しいです。